パブリシティ権とは何か?定義や他権利との違い、違反事例も解説

2022.12.05 広報ノウハウ

パブリシティ権とは、有名人や著名人の経済的利益を守るための権利です。しかし、実際にどのような権利がよくわからない人も多いでしょう。この記事では、広報の具体的な成果を求める中小・中堅企業の担当者に向けて、パブリシティ権の定義や肖像権・著作権との違い、違反となる具体例などを解説します。ぜひ、参考にしてください。

パブリシティ権とは何か

そもそも、パブリシティ権とは何なのでしょうか。ここでは、パブリシティ権の定義や意味について詳しく解説します。

パブリシティ権の定義

パブリシティ権の定義はあいまいであるため、人によってとらえ方が異なります。しかし、最高裁ではパブリシティ権についての判例が出されています。この最高裁の判例によると「人の氏名や肖像は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利」がパブリシティ権です。

有名人や著名人の場合、氏名や写真、動画などに経済的な価値が生まれるため、氏名や肖像についての権利として、パブリシティ権が定義されています。

※参考:裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

パブリシティ権が持つ意味

人の氏名や肖像は、誰でも一定程度は守られる権利ですが、有名人や著名人は一般人と比べると保護されにくくなっています。たとえば、芸能人が街中を歩いているとカメラを向けられることが多く、ある程度は許容するしかありません。

しかし、有名人の場合は名前や肖像などが経済的な利益を生み出す効果が高いため、権利が保護されるべきです。そのため、パブリシティ権は「自身の名前や写真などを使わせる代わりに対価を得る権利」ともいえます。

混同しやすい他権利との違い

パブリシティ権と混同しやすい権利として「肖像権」と「著作権」があります。以下では、それぞれの権利との違いを解説します。

肖像権との違い

肖像権とは、無断で個人の写真や動画などを公表させないための権利です。有名人や一般人に関わらず対象となります。たとえば、写真を無断で雑誌に掲載する、ネットにアップするなどの行為は肖像権違反となります。

パブリシティ権は、有名人や芸能人の写真などを用いて生まれる利益を保護するのが目的です。つまり、肖像権は人格的利益を保護するのに対し、パブリシティ権は財産的利益を保護する権利といえます。

著作権との違い

著作権とは、写真や画像、出版物や音楽といった創作物の保護を目的に、著作権法において保護されている権利です。

パブリシティ権と似ている権利ですが、著作権は「著作物・創作物」を保護しているものであり、被写体となった人物の権利保護は対象外です。つまり、芸能人が無断で写真を使用された場合でも、著作権による保護は難しいため、経済的利益が侵害された場合はパブリシティ権の侵害を訴える必要があります。

パブリシティ権の侵害になる条件とは

有名人などの名前や写真を無断で使ったからといって、すべてがパブリシティ権の侵害になるとは限りません。権利の侵害によって違法となるケースを最高裁が明示しているため、判例を確認するとよいでしょう。

パブリシティ権が侵害されたとして認められるには、「顧客吸引力の利用を目的としている・無断使用している」ことが条件となります。つまり、許可を得ずに顧客を引きつける目的で利用しているかが争点です。

権利の侵害になるケース

権利の侵害となるケースには、有名人の写真を利用したカレンダーや文房具、ブロマイドなどが挙げられます。これらの商品は、有名人の写真がメインとなるもので、その他に特徴や違いがありません。そのため、有名人の顧客吸引力の利用を目的としているとみなされ、権利者に無断で使用した場合には経済的利益を害すると判断されます。

権利の侵害にならないケース

有名人や著名人の名前や肖像を無断で利用した場合でも、権利の侵害にならないケースがあります。

報道への使用ケース

報道は、ニュースなどの報道の中身自体に顧客吸引力があると考えられています。報道の正確性やニュースを素早く伝えることが顧客を引きつける要素であり、有名人や著名人の肖像によって顧客を引きつけるものではないためです。また、事実を報道するためには名前や肖像の利用が必要となるため、報道への使用はパブリシティ権の侵害にはあたりません。

伝記としての使用ケース

有名人や著名人の生い立ちなどを記した伝記は、伝記そのものに顧客を引きつける力があると考えられています。そのため、伝記として有名人の肖像を使用するケースでは、パブリシティ権を侵害していると判断される可能性は低いでしょう。後述する過去の判例でも、伝記が権利を侵害するとは認められていません。

パブリシティ権に関する3つの裁判事例

パブリシティ権に関する裁判は複数行われていますが、その中でも有名な裁判事例を3つ紹介します。

事例1:ピンクレディー事件

ピンクレディー事件とは、ある週刊誌にピンクレディーの振り付けを用いたダイエット法が掲載され、損害賠償請求された事件です。この事件では、ダイエット法の紹介のために複数の写真が無断で掲載されていました。

しかし、最高裁では権利の侵害を認めないとする判決が出ています。ダイエット法の紹介でピンクレディーそのものの紹介ではないこと、雑誌200ページの内写真掲載されたのが3ページだったことなどがその理由です。

事例2:中田英寿事件

中田英寿事件とは、無断使用した場合でもすべての案件がパブリシティ権に違反するわけではないと証明された事例です。

この事件では、元サッカー選手の中田英寿氏の半生をまとめた書籍が無断で発行され、書籍発行の差し止め・出版販売業者に損害賠償請求を行いました。しかし、関係者のインタビューや取材活動などを基にした文章が本書の中心であること、肖像などの顧客吸引力に依存しているとはいえないことなどを理由に、パブリシティ権の侵害は認められませんでした。

事例3:ペ・ヨンジュン事件

ペ・ヨンジュン事件とは、韓国人俳優のペ・ヨンジュン氏が自身の写真などを掲載した出版社に対して、パブリシティ権の侵害であるとして損害賠償を求めた事件です。

裁判では、雑誌の構成内容が権利を侵害しているとする判決が出ています。雑誌は、ペ・ヨンジュン氏関連の記事や広告、写真などで構成され、多くのページの全面に写真が使われていました。その一方で、記事部分がわずかであることなどから、ペ・ヨンジュン氏の顧客吸引力のみに依存しているとみなされました。

パブリシティ権とSNS

インターネットの発展により、SNSが広く普及しています。SNSが身近なものとなり利用者が増加したことで、他者の権利を侵害してしまう恐れも高まっているため注意しましょう。以下では、SNS利用者が注意すべきポイントについて解説します。

SNS利用者が注意すべき点

SNS利用者は、意識せずにパブリシティ権や著作権などを侵害してしまう可能性があります。たとえば、オンラインライブや配信などの映像を録画し自分のSNSに投稿する、公式サイトや会員限定コンテンツのスクリーンショットをSNSに投稿するなどの行為は、権利侵害にあたります。

場合によっては、訴訟を起こされたり巨額の賠償金を請求されたりする可能性があるため、投稿する際には権利侵害にあたらないかどうかしっかり確認しましょう。

権利所有者に確認する

有名人や著名人の肖像などを利用したい場合には、権利所有者に確認することが重要です。写真などの画像の場合には、写真を撮ったカメラマンに著作権があり、写っている有名人に肖像権があります。そのため、著作権者と被写体となる人物や事務所などに利用範囲の確認をしましょう。

また、事務所によっては使用方法を公式サイトなどに明示しているケースもあります。そのため、あらかじめ公式サイトなどを確認しておくことも大切です。

不安な場合は弁護士相談も有効

パブリシティ権の侵害に問われる可能性はケースバイケースです。そのため、不安な場合は弁護士に相談してみることも視野に入れましょう。法的な立場から分析してもらうことができ、アドバイスも受けられるため、不安がある場合に有効です。

万が一、権利を侵害してしまった場合、多額の賠償金などを請求されるリスクがあります。事前に権利侵害にあたるかどうか、専門家の判断を仰いでおくと安心です。

まとめ

パブリシティ権とは、有名人などの肖像や氏名で得られる利益を守る権利です。有名人の顧客吸引力のみに依存した商品や雑誌などに無断で使用した場合、パブリシティ権侵害に問われる可能性があるため注意しましょう。

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